日本語教師【養成】
における教育内容
コミュニケーションを核として、「社会・文化に関わる領域」「教育に関わる領域」「言語に関わる領域」の三つの領域からなり、それぞれはあえて明確な線引きは行わず、段階的に緩やかな関係と捉え、また優先順位を設けず、いずれも等価と位置付ける。
区分
3領域の区分として、「社会・文化・地域」「言語と社会」「言語と心理」「言語と教育」「言語」の五つの区分を設ける。また,それぞれの下位の区分として、16区分を設定し、教育の目的や内容について解説を加えた。
社会・文化・地域
世界と日本
日本語教育が必要とされる社会的背景を考えるために、国際社会の実情と日本との関係、日本の社会・文化、学習者と日本との関係を理解する。
必須の教育内容
1 | 世界と日本の社会と文化 |
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その他の教育内容の例
歴史、教育、日本事情、海外の移民施策 等
異文化接触
多様な背景を持つ学習者個々に必要とされる日本語教育を考えるために、学習者が日本語を必要とするに至った経緯や、学習者と周囲との接触の状況を理解する。
必須の教育内容
2 | 日本の在留外国人施策 |
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3 | 多文化共生(地域社会における共生) |
その他の教育内容の例
国際協力、文化交流、地域協力、メンタルヘルス、外国人児童生徒等 等
日本語教育の歴史と現状
学習者に適切に接する態度や学習者の背景及び将来を考えるために、日本語教育の歴史や現状、制度を理解する。
必須の教育内容
4 | 日本語教育史 |
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5 | 言語政策 |
6 | 日本語の試験 |
7 | 世界と日本の日本語教育事情 |
その他の教育内容の例
教師養成、学習者の推移と多様化、教育制度、各国語試験 等
言語と社会
言語と社会の関係
学習者の円滑な社会生活を実現するために、社会、文化、政策と言語との関係やそれによって生じる言語の有り様、また社会的な行動を支える社会的・文化的慣習について理解する。
必須の教育内容
8 | 社会言語学 |
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9 | 言語政策と「ことば」 |
その他の教育内容の例
「ことば」と文化、言語社会学、教育社会学、言語接触、言語管理、継承語 等
言語使用と社会
様々な社会的状況において円滑なコミュニケーションを実現するために、社会や集団における言語・非言語行動の様相や方略について理解する。
必須の教育内容
10 | コミュニケーションストラテジ一 |
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11 | 待遇・敬意表現 |
12 | 言語・非言語行動 |
その他の教育内容の例
言語変種、ジェンダー差、世代差、地域言語と共通語、地域生活関連情報 等
異文化コミュニケーションと社会
異なる文化・言語を持つ人々が共存する社会の在り方を考えるために、互いの文化・言語に対する態度や言語を用いた人との関係構築について理解する。
必須の教育内容
13 | 多文化・多言語主義 |
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その他の教育内容の例
言語・文化相対主義、自文化(自民族)中心主義、言語選択、アイデンティティ、異文化間トレランス、言語イデオロギー、複文化・複言語主義 等
言語と心理
言語理解の過程
効果的な日本語教育を考えるために、学習者の言語情報の処理過程や学習の仕組み、学習の方法について理解する。
必須の教育内容
14 | 談話理解 |
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15 | 言語学習 |
その他の教育内容の例
言語処理、予測・推測、記憶、視点、学習者要因 等
言語習得・発達
個々の学習者に合わせた日本語教育を考えるために、言語の習得過程や学習者要因、また学習効果を高める方略について理解する。
必須の教育内容
16 | 習得過程(第一言語・第二言語) |
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17 | 学習ストラテジ一 |
その他の教育内容の例
幼児言語、中間言語、言語喪失、バイリンガリズム、学習過程、学習者タイプ、学習障害・発達障害 等
異文化理解と心理
自文化とは異なる環境にある学習者に配慮した指導を考えるために、異文化接触によって生じる問題とその解決、また動機や不安などの心的側面について理解する。
必須の教育内容
18 | 異文化受容・適応 |
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19 | 日本語の学習・教育の情意的側面 |
その他の教育内容の例
社会的スキル、集団主義、教育心理 等
言語と教育
言語教育法・実習
学習者の日本語能力と求められる日本語教育プログラムの目的や目標を踏まえた日本語教育を考えるために、コースを設計する方法、学習項目に合わせた教授法や教材の選択、授業を組み立てるための準備、学習の成果を測る観点と方法、教授能力を高めるための自他の授業分析に必要となる知識及び日本語教育を実践する力を身に付ける。
必須の教育内容
20 | 日本語教師の資質・能力 |
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21 | 日本語教育プログラムの理解と実践 |
22 | 教室・言語環境の設定 |
23 | コースデザイン |
24 | 教授法 |
25 | 教材分析・作成・開発 |
26 | 評価法 |
27 | 授業計画 |
28 | 教育実習 |
29 | 中間言語分析 |
30 | 授業分析・自己点検能力 |
31 | 目的・対象別日本語教育法 |
その他の教育内容の例
学習者情報、教育情報、教室活動、障害者教育 等
異文化間教育とコミュニケーション教育
文化の多様性を尊重し、異なる文化背景を持つ者同士の円滑なコミュニケーションを実現するために、文化を異にする者の物事の捉え方やコミュニケーション方略について理解する。
必須の教育内容
32 | 異文化間教育 |
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33 | 異文化コミュニケーション |
34 | コミュニケーション教育 |
その他の教育内容の例
学習者の権利、国際・比較教育、国際理解教育、開発コミュニケーション、異文化マネージメント、コミュニケーションに関する言語間対照 等
言語教育と情報
効率的で創造的な日本語教育を行うために、学習管理や教材作成等に必要となるICT活用方法を知るとともに、情報資源の扱い方について理解する。
必須の教育内容
35 | 日本語教育とICT |
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36 | 著作権 |
言語
言語の構造一般
学習をより効率的なものにするために、言語を分析的に観察する方法を理解し、世界の言語及び日本語を系統的・類型的に捉えるとともに、学習者の言語と日本語学習の関係を理解する。
必須の教育内容
37 | 一般言語学 |
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38 | 対照言語学 |
その他の教育内容の例
世界の諸言語、言語の類型、音声的類型、形態(語彙)的類型、統語的類型、意味論的類型、語用論的類型、言語学史 等
日本語の構造
日本語そのものに関する知識を学習者に正確に伝えるために、日本語を分析的に捉える方法を理解し、言語教育的な観点から多面的に整理された日本語に関する知識を体系的に身に付ける。
必須の教育内容
39 | 日本語教育のための日本語分析 |
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40 | 日本語教育のための音韻・音声体系 |
41 | 日本語教育のための文字と表記 |
42 | 日本語教育のための形態・語彙体系 |
43 | 日本語教育のための文法体系 |
44 | 日本語教育のための意味体系 |
45 | 日本語教育のための語用論的規範 |
その他の教育内容の例
日本語の系統、日本語史、日本語学史 等
言語研究
その他の教育内容の例
理論言語学、応用言語学、情報学、社会言語学、心理言語学、認知言語学、言語地理学、計量言語学、歴史言語学、コミュニケーション学 等
コミュニケーション能力
学習者の日本語によるコミュニケーション能力を育成するために、コミュニケーション能力に関する知識を身に付ける。また、日本語教育を実践する上で必要となるコミュニケーション能力を向上させる。
必須の教育内容
46 | 受容・理解能力 |
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47 | 言語運用能力 |
48 | 社会文化能力 |
49 | 対人関係能力 |
50 | 異文化調整能力 |
その他の教育内容の例
表出能力、談話構成能力、議論能力 等
【必須の教育内容】:日本語教師の養成においては、必須となる基礎的な項目について明示した。教育実習を含む「必須の教育内容」のカリキュラム全体に示す割合としては26単位又は420単位時間の3分の2以上となることが望ましい。
【その他の教育内容の例】:必須の教育内容以外の項目例については,参考として掲載したが、この限りではなく、各教育機関・団体の特徴を生かして設定することができる。