日本語教師養成・
研修推進拠点整備事業

文化庁
南山大学

社会・文化・地域

世界と日本

日本語教育が必要とされる社会的背景を考えるために,国際社会の実情と日本との関係,日本の社会・文化,学習者と日本との関係を理解する。

異文化接触

1多様な背景を持つ学習者個々に必要とされる日本語教育を考えるために,学習者が日本語を必要とするに至った経緯や,学習者と周囲との接触の状況を理解する。

日本語教育の歴史と現状

1.5学習者に適切に接する態度や学習者の将来を考えるために.5学習者の背景及び将来を考えるために,日本語教育の歴史や現状,制度を理解する。

言語と社会

言語と社会の関係

学習者の円滑な社会生活を実現するために,社会,文化,政策と言語との関係やそれによって生じる言語の有り様,また社会的な行動を支える社会的・文化的慣習について理解する。

言語使用と社会

1様々な社会的状況において円滑なコミュニケーションを実現するために,社会や集団における言語・非言語行動の様相や方略について理解する。

異文化コミュニケーションと社会

1.5異なる文化・言語を持つ人々が共存する社会の在り方を考えるために,互いの文化・言語に対する態度や言語を用いた人との関係構築について理解する。

言語と心理

言語理解の過程

効果的な日本語教育を考えるために,学習者の言語情報の処理過程や学習の仕組み,学習の方法について理解する。

言語習得・発達

1個々の学習者に合わせた日本語教育を考えるために,言語の習得過程や学習者要因,また学習効果を高める方略について理解する。

異文化理解と心理

1.5自文化とは異なる環境にある学習者に配慮した指導を考えるために,異文化接触によって生じる問題とその解決,また動機や不安などの心的側面について理解する。

言語と教育

言語教育法・実習

学習者の日本語能力と求められる日本語教育プログラムの目的や目標を踏まえた日本語教育を考えるために,コースを設計する方法,学習項目に合わせた教授法や教材の選択,授業を組み立てるための準備,学習の成果を測る観点と方法,教授能力を高めるための自他の授業分析に必要となる知識及び日本語教育を実践する力を身に付ける。

異文化間教育とコミュニケーション教育

1文化の多様性を尊重し,異なる文化背景を持つ者同士の円滑なコミュニケーションを実現するために,文化を異にする者の物事の捉え方やコミュニケーション方略について理解する。

言語教育と情報

1.5効率的で創造的な日本語教育を行うために,必要となるICT活用方法を知るとともに学習管理や教材作成等に必要となるICT活用方法を知るとともに,情報資源の扱い方について理解する。

言語

言語の構造一般

学習をより効率的なものにするために,言語を分析的に観察する方法を理解し,世界の言語及び日本語を系統的・類型的に捉えるとともに,学習者の言語と日本語学習の関係を理解する。

日本語の構造

1日本語そのものに関する知識を学習者に正確に伝えるために,日本語を分析的に捉える方法を理解し,言語教育的な観点から多面的に整理された日本語に関する知識を体系的に身に付ける。

言語研究

1.5理論言語学,応用言語学,情報学,しゃかいげんが.5社会言語学,心理言語学,認知言語学,言語地理学,計量言語学,歴史言語学,コミュニケーション学 等

コミュニケーション能力

2学習者の日本語によるコミュニケーション能力を育成するために,コミュニケーション能力に関する知識を身に付ける。 また,日本語教育を実践する上で必要となるコミュニケーション能力を向上させる。

この事業に対する想い

「日本語教師養成・研修推進拠点整備事業」に中部ブロックの拠点として本学が選ばれました。

中部ブロックの地域的特徴は、

  • ① 年少者(日本語指導が必要な児童生徒数:全国一位)
  • ② 生活者(在留外国人数:全国二位)
  • ③ 技能実習生(全国一位)

ということで、留学生に対する日本語教育を含めた、多様な知識とスキルを持つ教員養成が求められているといえます。これは、平成31年に文化審議会国語分科会の示した「(参考)日本語教育人材の役割・段階・活動分野に応じた多様性・研修のイメージ」に即したものと考えます。この「日本語教育人材の役割・段階・活動分野に応じた」というのは、もとより学習者の多様性に応じたものです。そして、日本語教師が向きあう学習者を考えると、このブロックでは、学習者が何か一つの活動分野でそれぞれ独立しているというものではなく、学習者はその間を、あるいはその複数を経由(在留資格を変更するなど)、またはまたがって存在しているものであるということが指摘できるでしょう。

つまり、この地域の日本語教員養成や日本語教員研修は、何か一つの分野に特化することを目指すと同時に、同じだけの比重で学習者の成長・日本での生活ステージの変化を視野に入れたものである必要があります。しかしながら、すべての教員が全分野に詳しくあることは現実問題としては困難であり、そこに、ネットワークの構築、相互の学びあい、「強み」とする分野の獲得が重要だと認識しています。

このことを踏まえ、本学が展開しようとしている本事業では、大学や日本語学校といった組織だけでなく、個人(フリーランス)として、ボランティアとして日本語教育に関わる人材はもちろん、日本語教育そのものに限らず、学習者の支援活動を行っている人材・多様な社会を支える人材をも巻き込み、広い基本的な知識を持ちつつ、自分の得意分野を伸ばしていく研修を展開していくことを目指していきます。

5年間の事業予定ですが、これは形を作る段階です。目指すのは、事業が終わってからも続くネットワークの構築です。「事業が終わってからも続く」ためには、世代交代も積極的に進める必要があります。そのための人材養成だということも頭の中に常に置いておきたいと思っています。

南山大学 人文学部日本文化学科
 上田 崇仁 教授